「あなたの愛が重い」
うちのおばはんときたら、今ねえテレビの八重の桜をつけっ放しにして、時々ちらちらそっちを見ながらパソコンをいじってるのよ。まったく一度に両方なんて無理に決まってるじゃないよねえ。
今日、あの人、ウォークマンの曲の入れ替えで久しぶりに昔の曲を何曲も選んだの。その中には、はしだのりひことシューベルツの「風」も入ってたのね。あの人にはほんとに忘れられない思い出のある歌なのよね。お母さんが亡くなってしばらくしたころにこの曲がよくかかっていてこれを聞いたお父さんがその歌はお母さんを思い出すから聞きたくないと言っていた歌なのよ。あの人もそれで、この歌を聞くとお母さんを思い出すの。
うちのおばはんて、小さいときからお父さんっ子だったんだけど、それと同時に一番上で初めての子だったから。下の二人より余計に両親の関心を集めていたのね。お母さんが小学校からずっと成績表を大事に箪笥にしまってあったのは長女のあの人のだけだったくらいなの。片耳が聞こえなくて、耳の遠かったお母さんは初めての赤ちゃんだったあの人のことは、何から何まで心配しすぎて、子供が何をしてほしいのか読み取って何でも先に手を出して子供に自分でやらせなかったのよ。
だからあの人、いまだに自分から行動するってのができないのよね。誰かが準備してくれるのを待って自分で何にもしないの。というか、どうすればいいのかよくわからないのよね、本当のところ。受身には強いけど、自分から動き出すのが苦手なのよ。いつだってお母さんがなんでも全部用意してくれていたから。
お母さんの影響力の強さといったら、昔、心理の先生のところに週一度、ずっと通って自分の心を整理してわかったのは自分とお母さんのつながりが問題だったことなんだけど、あの人、お母さんが死んでからもお母さんと切れていなかったのよ。あれから何十年もたって、若いころみたいにお母さんに呑み込まれた状態が続いていて自分というものがないような状態は抜け出しているんだけど、それでも自分から動き出すとなると弱いのよね。
お母さんは高校三年の卒業間際に突然に病気で亡くなっちゃったわけだけど、いまだにあの人に影響し続けているわよ。ほんとに怖いくらい。うちのおばはんの猫好きもお母さんゆずりだわ。よい影響だけを受け継いだらいいのに、あの人ったら、なんでもお母さん任せ立った子供のころをいまだに引きずっちゃってるんだもん。そこがあの人の弱みよ。
教会の神父様たちだってそこのところを理解しないと、あの人への判断も間違えるかもよ。大体、出だしからずっと間違えてばっかりだしさ。この先も全然見当違いな判断をしてたらどうにもならないと思うな。
昨日、あの人、NHKの目撃!日本列島の「あなたの愛が重い~娘と母にいま何が~」を少し見て、母と娘の問題なんて今に始まったことじゃないのにって、ぶつぶつ言ってたわ。お母さんて、いつまでたっても自分から生まれた子は自分の一部だと思っていて、子供のほうはすっかりお母さんに呑み込まれちゃってたり、何とかお母さんから切れようとしてものすごい戦いをしていたりほんとに大変なんだわさ。今月で64歳になろうというおばはんにして未だにその影響から抜けきれないでいるくらい重い問題なんだからね。簡単じゃないわよ。
長くなりすぎるからこの辺で今日はおしまいよ。ほんじゃまたね。
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